医療トピックス

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貧血を患った大男の話

2016年3月

 最近、日本でもアメリカンフットボールの人気が高まっています。アメリカンフットボールは、筋骨隆々の大男の選手たちが鍛え上げられた肉体をぶつけ合う、とてもハードなスポーツです。そのアメリカンフットボールのシンシナティ・ベンガルスにジーノ・アトキンスという守備の選手がいます。実は、アトキンス選手は生まれつき、「鎌状赤血球症Jという貧血を起こす病気を持っています。正常の赤血球は、大福もちをつぶしたような形をしていますが、この病気では赤血球が草を刈る鎌のような形をしているので、こう呼ばれています。これは遺伝子の異常によるもので、「鎌状赤血球症」は遺伝病の一種なのです。
 アトキンス選手はアフリカ系アメリカ人で、彼の祖先がアフリカにいる頃からこの病気を持っていたわけです。

 アフリカにはこの「鎌状赤血球症」の人が、地域によっては人口の約10%といると言われています。この病気になると、赤血球の中のヘモグロビンという物質の異常のため、本来ならば生存に不利になることで徐々に自然淘汰されて患者が減るはずでした。ところが、この病気を持っている人はアフリカなどに蔓延する、ある「感染症」に強いことが知られています。その「感染症」とは、力に刺されて高熱を発する病気で、現在でも熱帯地方を中心に世界中で毎年1億人もの人々が感染し、数十万人もの人々が生命を落としている有名な病気です。そう、それは「マラリア」なのです。マラリアは蚊が媒介するマラリア原虫が血液中の赤血球に入って増える病気です。ところが、「鎌状赤血球症」の人の赤血球はこの原虫が入るとすぐに壊れてしまい、そのためマラリアが発病しにくい、あるいは治りやすいと推測されているのです。このように、「鎌状赤血球症」の人はマラリアに抵抗力を持っているため、地球上から淘汰されずに子孫にこの病気を伝えてきたというわけです。

 ところでアトキンス選手ですが、空気が薄いデンバーなどの高地での試合の時は、チームドクターが慎重に出場を検討し、体調管理しながら参加させているそうです。「鎌状赤血球症」に限らず、貧血がある人は体内が酸素不足になり、激しいスポーツや脱水によって生命が脅かされることがあるからです。残念ながらこの病気は現代も治せませんが、医師たちの経験の積み重ねにより、大部分の患者は日常生活を安心して過ごせるようになっています。このような生まれつきの病気を患っていても、血液専門医の治療と、彼の素質を見出し、はげまし、サポートした家族や教師や友人のおかげで、アトキンス選手はプロフットボーラーとしての夢を実現したのです。私たちは、遺伝病を患っている人たちをもちろん差別してはいけませんが、更に一歩進んで、その可能性を広げてあげることに配慮すべきだと思います。

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