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医療トピックス
区民の皆様にその時期にマッチした情報をお知らせします。
「その肩の痛み、放っていませんか?」~五十肩の正体と正しい治し方~
2025年11月
■どんな病気?
肩関節周囲炎は、肩の関節を包んでいる袋(関節包)が硬くなって動かなくなる病気です。
痛みを伴い、だんだん腕が上がらなくなります。中高年の方に多く、「五十肩」と呼ばれることもあります。原因がはっきりしない場合を「一次性肩関節拘縮(凍結肩)」、ケガや手術など原因が明らかな場合を「二次性肩関節拘縮」と呼びます。
■なぜ起こるの?
正確な原因はまだ分かっていません。
しかし、糖尿病・甲状腺の病気・心臓病などを持つ方では発症しやすく、治りにくい傾向があります。
■どんな経過をたどるの?
凍結肩は時間とともに次の3つの段階をたどります。
1. 炎症期(えんしょうき)
肩がズキズキと痛み、夜も眠れないほどつらい時期です。炎症をおさえる注射や薬で痛みを落ち着かせます。
2. 拘縮期(こうしゅくき)
痛みは少し落ち着きますが、肩が固まり動きにくくなります。高い所に手が届かない、背中に手が回らないなど、日常生活に支障が出ます。
3. 回復期(かいふくき)
少しずつ肩が動くようになっていきます。1~2年で自然に良くなる方もいますが、完全に回復しないこともあります。
■保存療法(リハビリ)の限界
五十肩は自然に治ることがある一方で、必ずしもすべての方が回復するわけではありません。これまでの研究では、約2~3年かけて治癒する例もある一方、7~8年経っても約50%の方が痛みや可動域制限を残すという報告もあります。
つまり、闇雲に保存療法(湿布やマッサージ、漫然としたリハビリ)を続けても改善が乏しいことがあるということです。
五十肩の治療では、「時間が経てば自然に治る」と考えるよりも、病期に応じて最適な治療を選ぶことが重要です。痛みが強い時期には炎症を抑える注射、関節が固まった時期にはサイレントマニピュレーションや関節鏡視下手術など、科学的根拠に基づいた段階的な治療が回復への近道です。
■治療の方法
1. 薬・注射による治療
炎症が強い時期には、関節内や肩周囲に炎症を抑える注射を行います。夜間痛(夜にうずくような痛み)が強い場合に有効です。
2. リハビリテーション
痛みが落ち着いたら、温熱療法やストレッチで可動域を回復させます。
ただし、痛みが強い時期に無理をすると悪化するため、医師や理学療法士の指導が欠かせません。
3. サイレントマニピュレーション(非観血的授動術)
麻酔で肩の痛みを止め、眠っている間に医師が肩をゆっくり動かして関節の袋を広げます。施術後すぐに痛みが軽くなり、可動域が改善することが多い治療です。
4. 関節鏡視下手術
注射やリハビリで改善しない場合に、内視鏡を使って硬くなった関節包を切り離します。
手術後は麻酔で痛みを和らげながらリハビリを継続し、肩の動きを回復させていきます。
■腱板断裂との違い
「肩が痛くて上がらない」という症状は、五十肩だけでなく「腱板断裂(けんばんだんれつ)」でも起こります。しかし、原因や治療はまったく異なります。
【比較】
肩関節周囲炎(凍結肩): 原因不明、夜間痛が強く、痛くても少しは力が入る、自然に良くなることもあります。
腱板断裂: 転倒やスポーツが原因、動かすとズキッと痛む、力が入らない、手術が必要なこともあります。
特に中高年では「五十肩だと思っていたら腱板断裂だった」というケースもあります。
痛みが長く続いたり、力が入らない場合は早めに整形外科を受診しましょう。
■日常生活での注意点
・肩を冷やさないようにしましょう。
・痛みが強い時期は無理に動かさないようにします。
・痛みが落ち着いたら、少しずつストレッチを再開します。
・糖尿病の方は血糖コントロールを整えることが治りやすさにつながります。
■まとめ
肩関節周囲炎は、「痛み → 固まり → 回復」という流れで進行します。
自然に良くなる方もいますが、長期に痛みや動きの制限が残る方も少なくありません。
“放っておけば治る”とは限らない病気です。痛みが強い、夜眠れない、腕が上がらないと感じたら早めに整形外科で病期に合った治療を受けましょう。




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