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医療トピックス
区民の皆様にその時期にマッチした情報をお知らせします。
サイレント・パンデミックとは?
2025年9月
「サイレント・パンデミック」静かなる大流行が世界で拡大しています。と言われても何の事だか解らない方も多いと思います。「サイレント・パンデミック」とは、抗菌薬などの効かない薬剤耐性菌の大幅な増加を指します。
薬剤耐性菌とはペニシリン・セファロスポリン系抗菌剤・マクロライド系抗菌剤・キノロン系抗菌剤など肺炎や細菌性大腸炎・膀胱炎などに良く使われている薬剤に抵抗性を持つ細菌のことですが、この耐性菌に感染すると薬が効かないため治療が長引いたり、症状が重くなり時には死に至ります。
2019年の薬剤耐性菌感染症による死亡者数は世界で127万人でした。同年のHIV/エイズの死亡者数86万人、マラリアの死亡者数64万人と比較すると大変多いことが判ります。更にこのまま対策をしない場合は2050年には死亡者数が1000万人になると推計されています。新型コロナパンデミックによる死亡者数の3年間で約700~800万人と比較しても大変な数となります。
そのため以下のような「薬剤耐性対策アクションプラン」を作成して対応を試みています。
1:薬剤耐性菌対策の啓発・教育
2:サーベイランス(耐性菌の広がりや程度を調べる)
3:感染対策強化
4:抗菌薬適正使用(風邪など効果のない疾患で抗菌薬を使用しない)
5:創薬促進(新薬の開発)
6:国際協力(情報の共有・開発途上国への援助等)
しかしながら、新型コロナパンデミックがありその間はそちらへの対応が優先されていたため、サイレント・パンデミックへの対策は必ずしも順調とは言えません。これから長期に渡って対策が必要ですが、皆さんも手洗い・うがい・マスクの着用などの感染対策、免疫力を落とさないように十分な睡眠・バランスの良い食事・適度な運動に心がけ、また必要のない抗菌剤を使用しないようにしてください。
尚、薬剤耐性菌は南アジア・東南アジアなどの開発途上国に多く見られます。海外旅行の際は一層細菌感染に注意してください。